活動レポート
登山道保全ワークショップ(1泊2日コース)初開催!
2023.07.25
《2日目の朝、参加者の皆さんとスタッフで記念撮影@アグリーブルむかわ》
2023年7月22日(土)〜7月23日(日)、(株)ファーストアッセントとコラボレーションした企画「登山道保全ワークショップ1泊2日コース」を初開催しました。ご参加頂いた皆さん、開催にあたりご協力・サポート頂いた皆さん、本当にありがとうございました!(コースの概要はこちらの募集ページを参照ください)
募集時点では尾白川渓谷で観察・作業を実施するとしていましたが、直前に山守隊が行った現地調査・整備作業の結果、安全性や緊急性等を踏まえて日向山登山道に変更いたしました。実は、ワークショップ実施の僅か2日前の夜、北杜市は集中豪雨に見舞われ、日向山登山道の各所で土砂の流出や崩壊が多く見られました。水の流れやその影響を理解するという点ではとてもいいタイミングで、かつ、参加者の皆さんの力を借りて、すぐにでも修復したい場所があったのです。変更を受け入れ、長さ10メートルもある”大きな現場”の作業をして下さった皆さん、本当にありがとうございました。
作業Before Afterはこちら!
中間地点まででも、始点から終点までの高低差は約110センチ。長さは5メートル。最終的には上部まで作業を延伸させ、約5時間で長さ10メートルのガリーにステップができました!「こんなところ歩いたっけ?」と話しながら下山してくる登山者が多かったのですが、それもそのはず。作業をした私達も、元の姿を忘れてしまうほどの見事な出来栄えとなりました。北杜山守隊が一日で行った作業としては、過去最長でした。感動です。
それでは時系列で写真とともに当日の様子を紹介します。
Day1―自然観察
2日前の集中豪雨の影響が随所で見られました。
写真左(または上)から
・踏襲によって裸地化した場所が明らかに水の通り道となっている事がわかります。これは先月にはなかった溝です。
・土砂が斜面を流れた後です。
・登山道脇、踏襲によって裸地化した場所がまるで水路のように削られています。これは徐々に溝が深くなって来ています。
日帰りよりも時間をかけて、色々な地形や被害が出ている箇所を解説しながら見ていきます。登山者の心理と歩き方、それによる自然への影響について話を聞いた後、参加者の皆さんはしっかり登山道の真ん中を歩いているのが分かります(写真最後)。
途中こんなところも観察、解説しました。
ここは、先月6/17の日帰りワークショップで作ったステップです。あの時、砂は轢かなかったはず。土だけでふかふかで、土と丸太の間にも高さがあったのですが・・・。僅か1ヶ月で、水の流れが砂を運び、見事に進化していました。写真左(または上部)が今回撮影、写真右(または下部)が作業直後に撮影したものです。変化が一目瞭然ですよね。
「今日は観察なのて軍手は不要です」とご案内していたのですが・・・皆さん感が鋭いですね^^ 全員が軍手を持参して来てくれていたので、気になった箇所を急遽応急処置。裸地化した場所に水が流れてこれ以上に土壌の侵食がないよう、丸太を配置。これがうまく作業するか、今後観察していきます。
Day1―屋内ワークショップ
こちらは1泊2日コースにしかないプログラムです。
・北杜山守隊のビジョン、これまでと今後の事業に関する詳しい説明
・日本の国立公園の管理体制
・海外の国立公園の管理体制
・台湾の千里歩道協会の取り組み、組織体制
このようなことを説明しながら、参加者の皆さんからの疑問質問に答えていきます。
今回、青森県八戸市から福島県相馬市までの太平洋沿岸をつなぐ全長1000キロものロングトレイル「みちのく潮風トレイル」を運営・管理する、特定非営利活動法人みちのくトレイルクラブからも3名にご参加頂いたので、お互いの活動の情報交換もできました。また、環境省南アルプス自然保護官事務所から保護官がオブザーバーとして来てくださいました。保護官より、南アルプスエリアの鳥獣被害等現状の課題をお話頂いたり「国立公園はどういう基準で区域が決められるんでしょうか?」「海外の国立公園のように入域料などを徴収し、環境保護に活用できないのでしょうか?」などの質問に答えて頂きました。なんとも貴重な機会となりました!
Day1―「駒ケ岳スキレット」で南アルプスの恵みを味わう
美味しい料理、お酒で会話が弾みます。料理の写真は、アグリーブルむかわの裏の農園でシェフが育てたお野菜と清里高原湧水サーモンのサラダです。「まるでオーベルジュですね」というお言葉もいただき、皆さんに南アルプスの環境がもたらす恵みを感じてもらえて良かったです!
夕食後にはMountain Libraryで保護管を囲んで談笑する皆さんの姿が見られました。保護官、大人気! 滅多にない機会ですものね。他の皆さんも本を読んだり、同部屋の方たちと語らったり楽しそうにしてらっしゃいました。
Day2―作業
作業を解説し、皆さんの作業をサポートする、北杜山守隊の職人衆3名を加えて2日目がスタート。道具の使い方を説明し、現場へ向かいます。(スリングを使って説明しているのは、救助方法ではなく丸太の運び方です)
現場はここに決めました。参加者の皆さんがちょっと引いているのを感じました・・・(ほんとにこんなところ、今日一日でどうにかなるのかな・・・)。実際に歩いてみるとこんな感じの大きな溝です。動画をご覧ください。
途中滑ったり、段差が高いところでは一部登山道の外に足を置いていたり、足元が不安定な場所を通過するときは脇に生えている根っこを引っ張っていますね。
さて。「ほんとにこんな現場をやりきれるのか・・・」と誰もが不安な顔になる中、職人3人衆だけが「できますよ」と自信を持って言い切る・・・。とにかく完成を目指して作業開始!
長さ、高さ、幅を計測し、周辺に生えている根や石の場所などを考慮し、ステップの数や設置場所をみんなで考えて決めていきます。
決まったら資材運びです。女性も大きな丸太を一生懸命運んで下さいました。
現場より下へ流れ出た土砂を上へ運びます。これもなかなか重くて大変!
丸太を入れ込む場所を掘っていきます。掘って出た土もステップを埋めるために使うので集めます。
ステップをつけていきます。このハンマーみたいな「かけや」が今回大人気アイテムでした。「かけや、こっちくださーい!」というかけ声が飛び交っていました。次はもう一つかけやを準備しておきます。
作業が楽しくて夢中になってしまうのですが、一旦ランチ休憩。お菓子をシェアし合ったり、山の話、仕事の話・・・楽しい時間となりました。さて、後一息。作業再開!
だいぶ出来上がってきました!
職人衆が最終仕上げで職人技を見せます。高さを調整したり、登山者が足を置く場所を平らにしています。(平に見えますが、水の流れを予測して高さに微妙な変化をつけています)
作業前はとても歩きにくかった様子でしたが、上りも下りも軽やかに歩ける道になりました。これなら登山者も道を外れずに登山道を歩いてくれますね。登山道が自然に馴染み、周りの植生が回復していくことを願いながら、こちらもまた経過観察を続けていきたいと思います。
作業開始から約5時間!皆さんの力がなかったら、4日はかかっていたところを1日で完成することができました。
達成感でいっぱいです!皆さん、お疲れさまでした&ありがとうございました!
最後はみんなで2日間の振り返り。皆さんから頂いたコメントを一部紹介します。
「水の作用は未知のことで、びっくりした。短時間であそこまで修復できることにもびっくりした」
「登山をしていて嫌だなって思った階段は段差がきつかったり、不自然なもの。水の原理、人の心理を考えて作れば自然な階段、道ができる。それがわかるのが楽しかった」
「同じ思いを持った色々な人が集まり、その人達が発信して行くことで新たな山との関わり方が広がっていくと感じたし、広げていきたい」
「大人になって、こんなに夢中に体を動かすこがなくて、とても楽しかった。自分の事業にも活かせることがあった」
「日向山が自分のホームマウンテンになっていくのを感じた。人が集まることで保全のスピードが上がることもわかり、魅力を伝えていき母数を増やしたい」
「道を作る、というのは楽しいコンテンツだということを実感した」
2日間、このメンバーと同じ時間を過ごせたことは私たち北杜山守隊にとっても、大事な大事な思い出、財産となりました。
みんなで守る、山の道。このワークショップをもっと良いものにして、同じ思いを持ってくださる人を増やしていきたいと思います。
本当にありがとうございました。